2008年11月
いよいよ 紅葉狩り の季節になりましたね。
紅葉情報を見ながら、お出かけの計画を立てておられる方も多いでしょう。
私は今年も京都に出掛ける予定です。
紅葉は、光があたると、その赤がより一層美しく輝きますね。
日の光を浴びると透明感のある鮮やかな赤、
夜のライトアップでは幻想的な赤に。
やはり、時間に余裕を持って、
それぞれ趣の異なる紅葉の赤を、どちらも楽しみたいものです。
色づく葉というと、まず「赤」を思い浮かべると思いますが、
昔は、黄色に色づく葉が美しいとされていたのだそうです。
それが平安時代に赤く色づく葉が美しいとされ、
紅葉狩りが楽しまれるようになったと言われています。
最初に美しいと感じた紅葉はどこの紅葉だったのでしょう。
どのような場面で、その「赤」が心に飛び込んできたのでしょう。
そして、その美しさをどのように表現したのでしょう。
今年の紅葉狩り は、平安の雅を思い浮かべながら、
その「赤」を心に刻みたいと思います。
2008年10月
お月見というと「中秋の名月」(十五夜)を思い浮かべる方が多いと思いますが、10月には「十三夜」というもうひとつのお月見があります。
このふたつの月を見るのが「お月見」なのです。
一方の月しか見ないのは「片見月(かたみつき)」といってよくないとされてきました。
縁起が悪いといった、ちょっと脅かすような言い伝えもあるようですが、
私はこう思うんです。
十五夜の月も美しいけれど、空気が澄み、空が高くなった十三夜の月は、
さらに美しいことを教えてくれているんじゃないかって。
実際、十五夜の頃は秋の長雨で見れないことが多いのですが、
十三夜は天候が安定し、美しい月を見れる確率が高いそうです。
「十三夜に曇り無し」という言葉もあるくらいですから。
文献によっては、十五夜に月を見れなかった時のための
予備日的な意味合いもあったと記されているものもあります。
それほど、月を愛でることを大切に考えていたのでしょうね。
今年の十三夜は10月11日です。
2008年 8月
夏の着物といえば、絽(ろ)や紗(しゃ)です。
私は暑さに弱いので、夏に着物を着ることはまずありませんが、絽や紗の着物をさらっと着こなしている方を見ると、本当に素敵だなあと思います。
涼しげで、ちょっと粋で、憧れの装いです。
涼しげに見えますが、実は全然涼しくないんですよ。
夏に絽や紗の着物を着るのは涼しいからではなく、まわりの方が涼しく見えるために着るものなのです。
凄いですよね。
古くから受け継がれている室礼もそうですね。
住む人の居心地も大切ですが、訪ねてきて下さった方を季節感のある空間でおもてなしする―
衣食住に季節感を取り入れるということは、まわりの方への心配りでもあるんですね。
2008年 6月
今年は例年より早く梅雨に入りました。
昨年より20日も早かったんだそうですね。
突然ですが、問題です。
卯の花腐し(うのはなくたし)、茅花流し(つばなながし)、神立(かんだち)、栗花落(ついり・つゆり)…
これらは何の言葉でしょう。
では次。
傘かしげ(かさかしげ)、狐の嫁入り(きつねのよめいり)、夕立ち(ゆうだち)…
もうおわかりですよね。
これらはみんな雨に関する言葉なんですよ。
雨には本当にたくさんの言葉や名前がありますね。
「雨」という言葉が入るものも加えれば、もっともっと。
青時雨(あおしぐれ)、翠雨(すいう)、分龍雨(ぶんりょうのあめ)、喜雨(きう)、緑雨(りょくう)、肘かさ雨(ひじかさあめ)、篠突く雨(しのつくあめ)、時雨(しぐれ)…
梅雨のものだけでも
走り梅雨、迎え梅雨、梅雨の走り、梅雨晴れ、梅雨入り晴れ、男梅雨、女梅雨、空梅雨…
こんなにたくさん。
どれも情景が目に浮かぶような、風情のある言葉ばかり。雨は日本の生活や文化と大きくかかわってきたのでしょうね。
2008年 5月
緑の鮮やかさが日に日に増し、爽やかな季節になりました。
毎朝、玄関や門の前を掃除するのもとても気持ちがいいです。
寒い冬はさぼりたい気持ちと戦いながらですが、この季節は、毎日清々しい一日の始まりを迎えています。
仕事をしている時も、この気持ちのまま過ごせたらいいのですが…
先日、一番茶が届きました。
新茶と一番茶。
その年の最初に生育した新芽を摘み採ってつくったお茶のことで、基本的には同じものなのだそうです。
送って下さったものは、本当に最初に摘まれたもので大変貴重なもの。
ありがたくありがたく、頂戴しました。
とてもよい香りでおいしかったです!
あ〜幸せ。
暮らしの中のちっちゃな幸せ…私、大好きなんです。
一番茶をいただくと、一年間無病息災で過ごせるという言い伝えがあります。
今年も皆が元気で暮らせますように。
日頃、ペットボトルのお茶を飲んでおられる方も、この季節はぜひぜひ急須にお茶を入れて、新茶を味わってください。
ほっこりした気分になりますよ、きっと。
2008年 2月
2月の行事といえば節分ですね。
節分とは節の分かれ目のこと。
四季の始まりである立春・立夏・立秋・立冬の前日のことをいいます。
旧暦では、立春が1年の始めとされていました。いわばお正月。
その前日ですから、2月の節分は大晦日というわけです。
他の節分にはない様々な行事を行うのも、新しい年を迎える節として、特別な思いがあったからでしょう。
今では節分といえば立春の前の日を指すようになりました。
節分の行事といえば豆まき。そして恵方巻き。
恵方巻きは、元々大阪の海苔問屋協同組合のイベントで行われたものですが、
今では全国的にすっかり定着したようです。
我が家でもやっています。
皆が同じ方向を向いて巻き寿司にかぶりつく光景がたまらなくおかしくなり、いつも吹き出しそうになりますが、しゃべってはいけないんですよね。だから、笑いを堪えながら黙々と食べています。毎年「これって何か変」と思いつつ…。でも、楽しいことはいいことです。
古くから伝わる風物詩も、きっかけはこんなものだったのかもしれません。
2008年 1月
皆様はどのようなお正月を迎えられましたか。
新しい年を迎えると、気持ちも引き締まりますね。
今年の元旦、テレビをつけると偶然、富士山の初日の出を中継していて
「ダイヤモンドリング」を見ることができました。
その輝きは素晴らしく、新しい年の幕開けにふさわしい光景でした。
思いがけず、このような映像を見ることができてラッキーでした。
テレビの画面に向かって思わず手を合わしお願い事をしましたが、お願い事は届いたでしょうか。
慌ててしまって、自分のことをお願いするのを忘れてしまったので、今年も自力で頑張るしかありませんね。
「正月」の「正」という字には改まるという意味があります。
昨年素晴らしい一年だった人にも、あまりよいことがなかった人にも、
すべての人に新たな年が始まります。
どうか、皆が笑顔で過ごすことができる一年でありますように。
2007年12月
先日、久しぶりに京都に行ってきました。
南座には顔見世興行のまねきが上がり、とても華やいだ雰囲気が漂っていました。
まねきは京都の冬の風物詩のひとつ。いよいよ師走ですね。
「師走」という言葉を聞くだけで何だかあわただしい気持ちになってしまいます。
12月
は行事も目白押し。
お歳暮、年賀状書き、大掃除、お正月の準備…やることがいっぱいあって大変。でも、その忙しさが楽しくもあります。いえ、楽しくやります。
だって、もうすぐ新しい年がやって来るんですもの。おめでたいことの準備をするのはわくわくするものです。
少し早いかなとは思ったのですが、せっかく京都に行ったのですから、きれいな和紙のお箸袋とぽち袋を買ってきました。今、引き出しの中で出番を待っています。
2007年11月
読書の秋、芸術の秋、スポーツの秋…
秋にはいろいろな呼び名がありますが、私の楽しみの一番は、やはり「味覚の秋」でしょうか。
松茸、柿、栗、ぶどう、さんま、さつまいも…思い浮かべるだけでも、お腹がグーと鳴りそうです。
日本は昔から旬のものをいただくことを大切にしてきました。
それは、粋(いき)だとされてきましたが、決してそれだけではありません。旬の食べ物には、その季節を過ごすのに必要な栄養がちゃんと含まれているのです。自然というのは、実によくできているものだなあとつくづく感じます。「初物を食べると長生きする」という言い伝えも、人々の知恵なのでしょうね。
2007年 9月
まだまだ残暑が厳しい毎日ですが、朝晩に涼しさを感じる頃には、秋の草花が目に留まるようになります。その代表とされているのが、秋の七草ですね。
萩(はぎ)、尾花(おばな)、葛(くず)、撫子(なでしこ)、
女郎花(おみなえし)、藤袴(ふじばかま)、桔梗(ききょう)
万葉集で山上憶良(やまのうえのおくら)が「秋の野に 咲きたる花を 指折り(おゆびおり) かき数ふれば 七種(ななくさ)の花」「萩が花 尾花葛花 撫子が花 女郎花 また藤袴 朝顔が花」(※二首目は、「五・七・七、五・七・七」の旋頭歌)と詠んだことで、秋の七草として親しまれてきたと言われています。
尾花は「すすき」のこと。朝貌は「桔梗」のことだろうと言われていますが、定かではありません。細かいことをいうと、萩や葛は草花ではなく木です。これらを「七草」と呼んでいいのか―なんておっしゃる方がいましたが、何て無粋なこと。
秋の涼しさを運んでくれる花達に風流を感じることができればいいのですから。
2007年 8月
いよいよ夏真っ盛り。1年の中で最も暑い季節になりました。夏といってまず浮かぶ花といえば朝顔。
私が幼い頃にはどこの家の庭先にも朝顔を見かけた記憶があるのですが、最近は育てておられる家も少なくなった気がします。
でも、今この朝顔が環境の面で大変注目されていますね。
朝顔やへちま、つるむらさきなどで作る緑のカーテンが、暑さを和らげるのにとても効果的なのだそうです。これらは、水を根から吸い上げ葉から蒸散するため、日よけだけでなく気温を下げてくれるのだとか。
今のように環境を声高に叫ぶ必要のなかった時代から、人々の知恵として、よしずや簾(すだれ)の替わりに窓辺に朝顔を植えていたのでしょう。昔の人々の暮らしには、本当に学ぶことが多いですね。
朝顔は、決して華やかではない素朴な印象の花ですが、毎朝、元気いっぱいに花を咲かせて「おはよう」と言ってくれている姿に心が和みませんか。茶道では、朝茶の茶花として籠に一輪の朝顔を生けたりするんですよ。その何とも言えぬ素朴さが情緒と涼を感じさせてくれます。まさに、夏の風物詩といえる花ですね。
2007年 7月
1年もあっという間に半分が過ぎました。
年の始めに立てた志も、日々の生活に追われてついつい…。反省の意味も込めつつ、夏の準備のための大掃除ならぬ中掃除をしました。
敷物を涼しげなものに替えたり、花瓶や食器をガラス製のものにしたり、それから、小窓のカフェカーテンをすだれにしてみました。ずいぶん涼しげにな雰囲気になりましたよ。
これからは、お中元や暑中見舞いの準備、夏休みや旅行など、行事が目白押しで、あっという間に時間が過ぎてしまいます。そのうちにやろうと思っていてもなかなかできないもの。思い切って1日をお掃除日にしてみるといいと思いますよ。
お掃除が済んだら、水を張った器の中に葉っぱやお花を浮かべて、お部屋や玄関に飾ってみてください。涼しさの演出だけでなく、落ち着いた雰囲気にしてくれます。
2007年 6月
6月といって思い浮かぶのは雨、そして梅雨ですね。
この「梅雨(ばいう)」は、中国から伝わった「黴雨(ばいう)」という言葉が語源になっているそうです。「黴雨」の黴は「カビ」のこと。語感が良くないということから「黴」のかわりに「梅」の文字を使うようになりました。この時季は梅の実が熟す頃ですものね。
江戸時代になって「梅雨(つゆ)」と呼ぶようになりました。文字や言葉にも風情を感じさせてくれるところは日本らしい気がします。
雨の日が続くとどうしても鬱陶しい気分になりがちですが、昨今の水不足を思うと、素直に「ありがとう」という気持ちになります。この時季の雨は、農作物にとっても恵みの雨。この雨があってこそおいしいものがいただけるんですものね。
2007年 5月
桜の花も散り、緑がまぶしい頃となりました。清々しいという言葉が最もふさわしい季節ですね。
茶道では、5月になると炉を閉じ、風炉にかわります。それに伴ってお茶の道具、お茶室の花もかわります。花入もこの頃から籠のものを用いたりして涼しげでさわやかな印象を演出するんですよ。
あらゆるものの装いが変わると、とてもすっきりとして気持ちも軽やかになるものです。
籠は夏のものという印象がありますが、この頃から、部屋の小物に籠を加えてみてはいかがでしょう。立夏も過ぎ、暦の上ではもう夏ですから。
敷物もピンクから淡いグリーンに変えると、さわやかな気持ちになりますよ。
2007年 4月
「あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖ふる」(あかねさす むらさきのゆき しめのゆき のもりみずや きみがそでふる)
「紫の にほへる妹を 憎くあらば 人妻故に 我恋ひめやも」(むらさきの におえるいもを にくくあらば ひとづまゆえに われこいひめやも)
皆さんよくご存知、万葉集に記された額田王(ぬかたのおおきみ)と大海人皇子(おおあまのみこ)の有名な相聞歌です。
古代中国では、穢れを祓うために端午の日に野に出、薬草を摘み、野遊びをしました。この風習、日本には飛鳥の頃に伝わったとされています。
この歌は、668年5月5日、天智天皇を始めとする宮中の人々が蒲生野に薬草狩りに出掛けた時に詠まれたものです。(別の説もありますが)
今は5月5日は「こどもの日」。そして男の子の成長を願う「端午の節句」としてお祝いをする日とされていますが、万葉の昔のその日、壮大なロマンスがあったのですね。